高齢者の被害が増加・リースバック

不動産トラブル

リースバック悪用高齢者被害相次ぐ

自宅を売却後、買い主に賃料を支払うことで居住し続けることができる「リースバック」と呼ばれるサービスなどを巡り、高齢者の不動産売買トラブルが増えている。サービスを悪用し、不当に安い価格で買い取る手口などが横行。ただ、契約の取り消しを認めるクーリングオフの対象ではないため、被害者側は自宅などを手放すか、高額の違約金を支払って契約を解除するしかない。弁護士会は被害事例の収集・分析を行い、被害防止に向けた立法措置の提言に乗り出す。

契約解除に巨額違約金

国民生活センターによると、全国の消費生活センターに、60歳以上から寄せられた自宅売却トラブルの相談は、平成30年以降、毎年600件以上に上る。中には、約9時間居座られた末に署名・押印してしまったケースや、売却契約の翌日にキャンセルを申し出たところ、約900万円の違約金を求められたケースもあった。トラブル増加の背景の一つとなっているのが、リースバックの悪用だ。住み慣れた家を離れず、老後の資金を確保できるとあって、高齢者の利用が増えている取引だが、悪徳業者が、不動産売買の知識に乏しい高齢者を狙い、強引に契約を迫る事例が増えている。

消費問題対策委員会によると不当に安い価格で不動産を売却させられたり、利用者が払う賃料を市場価格よりも割高に設定されたりするトラブルも多い。国土交通省が公表したトラブル事例では、事業者から「10年後には取り壊される」という虚偽の説明を受けた高齢者が、自宅マンションを約2000万円で売却し、家賃を20万円に設定されたが、10年居住すれば売却代金を上回ることから、キャンセルしたい旨を伝えたところ、「キャンセルできない」と言われたと言う。売買契約書の特記事項に賃料が小さく記載されているだけのものもあり、同委員会委員長の弁護士は「賃料が必要だと知らずに契約してしまったケースもある」と話す。リースバックの場合、売却後も自宅に住み続けることができるため、長期間被害に気がつかない可能性もある。同委員会によると、被害を訴えたとしても、対象が高齢者であるため、契約内容を把握することが難しいうえに、契約書自体に署名押印をしてしまっていることから、被害が拡大しているのが実情だ。

特定商取引法の規定

特定商取引法の訪問購入に関する規定では、不動産取引はクーリングオフの適用対象外。宅地建物取引業法にもクーリングオフの規定はあるものの、「売り主が不動産業者の場合のみで個人には当てはまらない。リースバックに関するトラブルは救済されにくい。ある弁護士は「特商法の適用対象に不動産を加えることなどを視野に、被害事例の情報収集・分析を進めたい。近年は単身独居の高齢者が多く、被害防止を親族だけに頼るのは無理がある。地域に根ざしたネットワークによって、高齢者を見守るシステムが必要だ」と訴えている。

 

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