受信料未払い2割、視聴者との溝。
テレビは持っているが、家族はほとんどNHKを見ていない。なぜ受信料を払う
必要があるのか?夫と小学生と3人でクラス40代の女性会社員。マンション
購入時にNHKと受信契約を結んだが、見ていないのに払う意義を感じられず、
テレビが壊れたときに一度捨てて受信契約を解除したという。その後、再び
テレビを購入し、民法番組やユーチューブなどの動画を見ている。総務省に
よると令和3年度の受信料支払い率は79.6%。5分の1の世帯が払っていない
不公平が生じている。
放送法は、受信機(テレビ)を持つ人に、NHKとの受信契約を義務付けるが、
支払い義務を直接規定せず罰則もない。なぜこんな形になっているのか。
規定が玉虫色に決着
受信料はなぜどういう根拠で払わなければならないのか。大事なことが長年
分かりづらいままになっている。現在の受信料制度が誕生したのは、放送法
などが成立した昭和25年。税金にしなかったのは、国に情報統制された
戦前の反省を踏まえたものだ。
NHKは公式サイトで「税金でも広告収入でもなく、皆様に公平に負担して
いただく受信料だからこそ、特定の利益や意向に左右されることなく、
公共放送の役割を果たしていける」と説明する。受信料は視聴の「対価」
ではなく、公共放送を運営する「負担金」と位置づけられている。
放送法成立の経緯について、立案担当者は「放送史への証言」(放送文化基金編)
の中で、「ある程度契約強制みたいな形で面倒を見なければ、NHKの受信料は
確保できないと説明する。放送法の検討過程では受信料の支払い義務が発生する
案も示されたが、「受信料確保のための強制措置という要素を極力減らし、
あくまでも受信者とNHKとの[契約]を重視するという方向に内容が変化」した。
徴収の実効性を高める規定をあえて設けない・・。このグレーゾーンを見直す
動きもあった。昭和41年、55年には支払い義務化を含めた放送法改正案が国会に
提出されたが、審議未了で廃案。約70年前の「玉虫色の決着」は基本形を
変えないまま現在に至る。
NHK不祥事の発覚
受信料の支払い率は平成16年に、大きく落ち込んだ。制作費着服などの不祥事が
相次いで発覚し、会長は17年1月に引責辞任。この年の支払い率は7割を切った。
「元に戻るに戻るのに七年かかった」と、NHK関係者。「職員が一軒一軒の家を
回るなどして信頼回復に取り組んだ」と言う。公共放送は視聴者全員が総意で
支えようという意志の下に成立するからこそ、法的強制力がなくても受信料制度は
成り立ってきた。ただ、NHKは今年4月、悪質な未払い者に2倍の割増金を
上乗せする制度を導入した。「皆様のために」と言う発想が根底にあったはずの
公共性がを”お上”からの押さえ込みに変わりつつある。公共放送の本来の姿勢とは
相容れないのでは」と疑問を呈す。
強制サブスクの値段
テレビ離れが若者を中心に進む中、NHK受信料は地上契約で1000円以上、
衛星契約は2000円を超える。「強制サブスク」として1000円以上取るのは
確かに高いと思う。NHK記者の1人はこう吐露する。サブスクは動画配信
サービスなどの定額制のこと。景気が減速し、サブスクも広まった現代に、
今の受信料は高すぎる。自動的に受信料を取られるという被害者意識を抱く
人も多い」と指摘する。一方海外の公共放送事情だが、「災害や戦争が起きた
ときに、SNS(交流サイト)は本当に信用できるのか」と問いかける。
「ドイツの場合、公共放送の番組は大体つまらないと言われるが、
[有事の際も頼れる放送であってほしい]という共通の思いがある。
保険のように放送負担金を払っている。受信料は今週約1割値下げされるが
、政界からSNSまで、さらなる値下げを求める声は多い。テレビがメディアの
中心だった時代は受信料は特別なものだったが、今は動画配信サービスなど
比較対象がたくさんある。受信料というものを多くの人が改めて考えるいい
機会である。