つなぎとめる命の電話

いのちの電話

いのちの電話。

不安や悩みの相談を受ける「いのちの電話」

全国に50カ所ある、いのちの電話の拠点の一つとして、

「関西いのちの電話」は半世紀にわたり、電話の向こうに

心と耳を傾けてきた。

「生きるのが辛い」、「孤独だ」

寄せられる悩みはさまざまだが、否定せず気持ちに寄り添う。

新型コロナウイルス禍を経て、世間には閉塞感が漂い、有名人の

自殺も続く

需要が高まる中、24時間体制で傾聴を続けているが、相談員の

高齢化や不足といった課題が深刻化している。

24時間365日 隣人として傾聴

「こんばんは、いのちの電話です。どうされましたか?」

大阪市淀川区にある社会福祉法人の建物の一角に

開設される、関西いのちの電話。

1畳ほどの小さなブースに設置された事務机の前で、

ボランティア相談員が固定電話を取る。

相槌を打ちながら、電話の向こうに静かに耳を傾ける。

ときにその電話が、誰かの命をつなぎ留める「いかり」になる。

「自分の価値観を持ち込まず、相談者の内面を理解しながら

話を聞くことが重要。悩みや不安は聞きますが、正しい方向に

導くことが私たちの役割ではないんです」。

20年以上のキャリアを持つ女性相談員は静かに話す。

孤立や孤独感、先行きへの不安。

匿名で寄せられる相談は誰にも話すことができない心の叫びだ。

顔が見えないだけに、相談員は電話の向こうの声のトーンや抑揚、

息遣いにまで注意を払う。

ときに相談は長時間におよぶこともあるが、「時間が長いから

悩みが深刻、短いから簡単に解決するということではない。」

(女性相談員)という。

話をして、納得できるまでの時間は相談者によって異なる。

それまでじっと相談者の話に耳を傾けるが、基本的に助言は

行わない。

話しているうちに、問題の本質に気付き、もつれた糸をほど

いていくのは相談者自身だからだ。

7月12日にはタレントのryuchell「りゅうちぇる」さんが急死、

現場の状況から自殺とみられると報じられた。

相談者の中には、こうした著名人の自殺報道などに影響を受け、

動揺している人も。

ただ、相談員たちがしっかりと話を聞く中で「最終的には自分とは

別の問題として納得してもらうことが多い」という。

女性相談員は続ける。

「相談窓口を探して電話をかけることが、行動に移す前のワンクッションに

なっている。

私たちは「隣人」として話を聞いて、答えを見つけるサポートをする。

困ったときはいつでもかけてきてほしい。

1人じゃないですよ。」

深刻化する相談員不足。

警察庁などの統計によると、昨年の自殺者は前年比874人増の

21,881人。

約10年前から減少していたが、新型コロナウイルス禍を経て

増加傾向にあり、相談窓口の重要性はますます高まっている。

電話相談は1953年、英国ロンドンで始まった。

日本では約20年後の昭和46年、東京でボランティアによる電話

相談が開始。

2年後には大阪でも関西いのちの電話が開局した。

関西いのちの電話事務局によると、現在、会社員や主婦など

20代から80代の300人のボランティア相談員が登録。

交代制で24時間365日休みなく対応できる体制を整えるが、

交通費などは相談員持ち。

負担は決して小さくない。

事務局によると、昨年の相談件数は17,132件。

需要は増す一方、スタッフの数が追いついていないのが実情と明かす。

かかってきた電話を取れないこともよくあり、事務局長は「いつ機能

不全に陥ってもおかしくない。」と話される。

また希望すれば相談員としてすぐに活動できるわけでもない。

心理学などを学ぶ研修期間は2年。

丁寧な対応が求められるだけに育成に時間をかけるが、途中で

辞退する受講者も少なくなく、なり手不足に陥るジレンマを

抱えている。

ただ、コロナ禍を経て、相談員をやりたいという応募者は増加

傾向にある。

令和2、3年はそれぞれ計50人の応募があった。

事務局長は「命をつなぎ留める事を担うのは重いけれど、

必要以上に怖がる必要はない。コロナを経て何か人の助けに

なればと応募してくれた人が増えたのではないか」と

分析している。 

 

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